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今日からまた仕事を再開しなければ生活できない。仕方ねぇ、行くか。スーツを着てカバンを持ち、家を出る。
「…行ってきまーす」
誰もいないのに、挨拶をしてしまうのは…。そう考えると無性に苛ついた。重い足取りで俺は会社に向かう。目的地に近づくにつれ、見たことのある輩が増えてきた。きっと会社の人間なんだろう。
「あ、新人さんの小田原さんよ」
会社に出勤する度に噂話をされるのは気分が悪い。俺の噂話をコソコソとすんじゃねぇよ。
「小田原さんって独身なのかしら?ちょっと私狙っちゃってもいいかな」
は?俺なんかを狙うなんて大丈夫か?
「何言ってんの!?小田原さん、左手の薬指に指輪してるのよ。だから、独身じゃないわよ」
いや、バリバリの独身ですけど…。この指輪は母さんがつけていた指輪だし。それにしても…、
「…ダル」
俺の小さな呟きは周囲の音で消えていった。
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