胸騒ぎのとき

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                      ★★  北沢はようやく両国にある自分の店に辿り着いた。店は窓のない黒ずんだ檜板で張られた二階家であった。一階がいわゆる店で、二階は住居になっている造りだった。玄関扉には『臨時休業』の張り紙がしてある。  北沢は眠たげにしている男の子の手を取り店の中に入った。 「腹が減っただろう。今夜はこの駅弁で済まそうな。味噌汁だけは作るからな。どうした輝夫、元気がないな。ママのことが気になるのか?」 「本当にママは帰ってくるの?」 「そうだ、だから楽しみにして待つんだ。お父さんも楽しみにしているよ。みんなで一緒に花火を見るんだ。いいだろう。はっはっはっは....」  北沢は願いごとを(まこと)しやかに男の子に言った。  食事を済ませたあと、北沢は男の子とシャワーを浴び、早々と布団の中に入った。だが、男の子は一向に眠りそうになかった。それもそのはず、泣くこと以外、これまで殆ど眠っていたからだ。仕方なく、気分を紛らわすために、北沢は男の子をつれ、屋上のベランダに行った。    
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