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「ストーカーとか?」
「うーん……何だろうね。悪意とかそういうのは感じないけど」
話をしていると重い扉が開く音がした。もしかしてと視線を移すと暇人がいた。未来を見て表情を輝かせている。涼も暇人に気づいて未来に尋ねた。
「あの人誰? 先生にあんな人いなかったよね」
「あの人、暇人、変な人。悪い人ではないらしいけどね」
未来は雑に紹介した。自分が説明しなくてもこの人はべらべらと自分のことを話すだろう。桐生はにこにことしながら未来の左隣に座った。
「よかった。君がまだここにいてくれて助かったよ。他の子とはまだ近づきにくいからね。それで隣の人は彼氏かい?」
「いえ、幼馴染です。あなたは?」
「ああ、俺はね。こういう者でね」
と名刺を取り出す。
「SSA……って放課後の?」
涼の言葉に未来は反応した。
「え、もしかして涼も?」
「うん、まさか未来と一緒だったなんて。一人だけだと思ってた」
幼馴染がまさか同じ説明会に参加するなんてと未来と涼は互いに驚く。
未来は心強いと思った。知っている人がいるなら今日の説明会は何とかなるのだろう。もし自分がさぼっても涼に内容を後で聞けるしなんとかなる。
今日の放課後には肉のタイムセールがあるから本当は参加したくない。未来の脳内にはそれしかなかった。
「そうなんだね。よろしく、名前は?」
「涼です。相良 涼」
「ああー、君が。そうかそうか。ちょうどよかったー」
暇人の興味が涼に移ったので未来は弁当に集中した。涼がいてくれて助かったと思う反面生贄にして申し訳ないなと未来は思う。
こうでもしなけらば自分の乱れたペースを整えられないから。
ストレスが余計に増えてしまうかもしれないが、自分だって限界が来ていたんだ。悪いが、少しの間だけ犠牲になってくれと未来は心の中で謝罪した。
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