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「未来、午後も出ないの?」
「今日は天気がいいからね。涼はまじめなんだね」
「ちゃんと受けないといけないかなって。勉強、大丈夫なの?」
「……まあ、なんとかなるんじゃないかな」
涼の指摘にぐさっと心が苦しくなった未来は乾いた笑みで答えた。
親は何も言わないけれど、涼には心配をかけてしまった。
「じゃあ、また放課後で。桐生さん」
「おう、よろしく」
未来はまたサボるわけだが、彼女の誤算は桐生がまだここにいることだ。
「桐生さん、まだいるのですか」
「いやー、こっちはやることなくて暇で」
「他の人の観察、もしくはどこかで暇をつぶせばいいじゃないですか」
「他の子はまじめに授業を受けているから。真面目な生徒の邪魔をするなって学校に言われていてね。まあ、時間までには会場で待機してもいいけれど」
どうやら桐生には動く気がないようだ。自分が他のところに行くしかないのだろうか。未来はしぶしぶと立ち上がる。
「はあ、せっかくいい天気だったのに」
「正確に言うと、うちのお姫様のお礼を言いたくてね」
「お姫様?」
「そう、うちのお姫様の友達になってくれてありがとうって。保護者として」
「友達……」
未来はぴんと来なかった。お姫様は大体誰か知っている。多分、あの子かなと。友達じゃない、ただの仲間だ。あの子とはそういう関係。
「他の誰かさんじゃないですか。私はお姫様なんて知りませんし、友達ゼロなんで」
未来は屋上を後にした。
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