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ぼっちには辛い仲良しイベントの始まり
気だるさを抱えながら未来は外に出た。
今日も学校に行って、終わったらスーパーに行って、あとは寝るだけ。
代り映えのない同じ一日。死ぬまで、いや、卒業するまでは同じ一日が何回も続くのだろうと多少げんなりしながら未来は通学路を歩く。
同じことの繰り返しというのは楽だけど精神的に疲れる。この生活はあとどれだけ続けていけるのか、迫りくる不安に未来は支配されていた。
支配されているのはそれだけではない。
(あの日からずっとこの色のままか)
それは冬の寒い日の出来事、横たわる大切な人、こぼれていく涙。
その経験を経てから未来の世界はセピア色に染まっていた。
食事も、本も、テレビの映像も、学校も何もかもだ。
それと同時に何か変な既視感を感じたり、頭痛がしたりという異変にも襲われている。
(もしかしたら私も近いかもね)
誰もが最後には辿る結末を未来が意識手していたら現実に戻された。
それは平穏な日常で聞く一言。
「おはよう」
朝の挨拶に未来はため息をついた。自分には挨拶をする相手がいない。なのに学校の先生は挨拶をしましょうと言う。
挨拶をするのは当然のことであり、しないのは何かしら人格とかに問題があるとか言わんばかりの無言の圧力をかけてくる。
友達とか仲の良い子がいないぼっちな自分には難しいことだ。
もし突然仲良しでもないただの他人に挨拶でもしたら、相手はどんな反応をするのだろう。不審者扱いでもされるのだろうか。
そういう恐怖を持ちながら未来は誰にも声をかけられないようにひっそりと教室に向かった。
朝礼の後に担任の西中先生に呼ばれた。何だろうと思って廊下に出るとプリントを渡される。
「説明会ですか」
「そう、放課後。ちゃんと失礼のないようにね。SSAの人たちが来るから」
「え、あのSSAですか」
「そう、そのSSA」
未来は信じられないとプリントの隅から隅まで見る。
プリントの最後には赤い印鑑が押されていた。
国立研究機関 シックスセンスアビリティ。
頭文字をとって通称SSA研究所。
それを見た瞬間、視界が大きく揺れる。
ああ、これだ。いつもの既視感に襲われる。
夢の中で見たような気がすると思いながら未来は知識を振り返った。
この研究所がどんなところかというと人間が持つ感覚、視覚とか聴覚などの五感のほかに六感というものがあり、それを実用的になにかすごい力にするとかなんとか。
簡単に言うと超能力とかそういうのを社会に役立つように実用させるというのを研究しているところ、つまり特殊な研究所である。
誰もがそれに選ばれるわけではなく何かしら特殊な力があったりしたら、研究所に呼ばれるらしい。
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