ぼっちには辛い仲良しイベントの始まり

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 相変わらず空は勢いを失ったセピア色。  雲はないようだから、きれいな青空なんだろう。  本来の色を忘れかけているのを実感しながら未来は座って眠りにつく。  最近不眠もあることだから、授業も受けられない。  寝ないように必死にやっているが、なんだか先生から心配の目を向けられているような気がする。  かわいそうだと同情してくる視線が嫌になって堂々とさぼるようになってしまった。  羊を数える暇もなく、目を閉じてもすぐに開けてしまうほど深刻な不眠になっていた。  他のことなら眠れそうだろうかと未来は考えてみる。  自分が卒業したら、この学校を出たらどうなるのだろうかと屋上から街を眺めた。  現在は二時限目の真っ最中、短いと思ったら案外一時間ほど寝ていたようだ。  本来なら私は教室にいるはず……しかし自分がいてもいなくても存在感が薄いから気づかれることはないし、誰かに叱られる心配なんてない。  だから安心してさぼることができる。 あまり目立たないように屋上の床に体を伏せながら屋上から住んでいる町をみていると心が落ち着く。あのぎゅうぎゅうの重箱にいたら息が詰まって死にそうだと。 自分の生きる世界は、教室という狭い場所だけじゃないと再確認できる屋上が未来にとっての安らぎだった。  初めてサボったのは三週間前、何回もさぼりをつづけると自然と罪悪感が薄れていくものだが、誰かに指摘されたらまだ痛い。  昔は良い子だったけど、今はもう立派な悪い子だ。汚い現実ばかり知ってからはもう、大人の言う通りになんてできない。  その日も未来は悠々自適に給水塔の根本にもたれかかって空を見ていた。 天国は空の上にあると、昔読んだ本に書かれていた。  現在は晴天で雲一つない。天国はどこにあるのか探してみるが、いまだに見つからず。天国探しに飽きたらこの後は昼ご飯までゆっくりと寝ようか。そう思った矢先のことだ。  ガコンと重たい扉が開く。この授業中に他にもさぼる生徒がいたのだろうか、それとも先生が見回りにきたとか。  未来は閉じかけた瞼を少しだけ上げて様子を見る。  どうせ自分はバレやしないが、ここに来た人は誰なのか知りたい欲がありちょっとだけ観察してみた。
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