ぼっちには辛い仲良しイベントの始まり

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「いきなり何なんですか。突然、私の苗字を当てるなんて」 「ごめん、突然でごめん。今日の放課後のこと、聞いているよな?」 「ああ、なんか説明会があるって研究所の方から」 「そう、それ。俺、担当するの。よろしく」 「……めっちゃ早くないですか。来るの」   放課後まではまだ時間がたっぷりある。どうしてこの人は早くここに来たのだろうか。余程の暇人なのか。未来は男に胡散臭さを感じて少しだけ離れた。 「え、何俺のこと暇人だと思ってるの? ひどいなあ、立派な仕事をしに来たんだよ。君たちが普段どんな生活をしているのか気になってね。他の子たちはまじめに授業を受けているようだけど、一人だけ見かけない子がいた」  見かけない子は自分だとぐさりと刺さる。未来はとっさに謝った。 「それが私ですね。すいませんでした」 「さぼりはダメって叱りに来たわけじゃないからね。大丈夫、他の人には言わないからさ」 「……」  叱られないのはいいけれど、自分のペースを乱されるのは嫌だ。 未来は今まで築いていた天国のような日常が男にかき乱されるのだろうと思うとげんなりした。  現在に至るまで自分を気に掛ける人はいたけれど、近づくと面倒になるのを知っているから声をかけられることはなかった。その分未来は安心したけれど、少しだけ孤独を感じる。  さみしくないと言い聞かせても心のどこかでは空虚を感じていた。   「はあ……」 気分が下がるのはいつものことだけど、今日はいつもよりたくさん気分が下がっている気がする。 不良じみた行動をするのはよくないけれど、まじめに生きる元気と気力が自分にはない。 今の自分が持っているのはせいぜい一日を長く生きようとする程度の生命力だけ。 生活力皆無、たまに貧血で倒れかけるほどの不健康、生きているようで死んでいる自分の目標はとにかく頑張ることだった。 誰にも悟られず、気にかけられず、世話をかけられずに死にたい。 いや、死にたいというよりは消えたい。 とにかく未来はただただ死にたがっていた。 最悪な将来を進むなら今のうちに死のうと。  どうせ自分が生きてもいいことなんてないから、いつも死にたいと思っていた。
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