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「それはそうと、どうしてさぼってるの?」
叱らないと宣言されたとはいえ、男の質問はぐさっと胸にささる。これ以上何も聞かないでほしい。
未来は無視をしようかと思ったが、桐生がじーっと答えを待っていたのでしぶしぶと口を開くことにした。
興味津々な視線が頬をチクチク刺すくらいに痛くて今すぐにでも叫びたかったが、ここで叫んだらサボっていることがばれてしまう。
怒りとそれをなだめる感情のぶつかり合いを感じながら未来は桐生を見つめた。
「何も考えたくないの」
未来は目を閉じる。家、学校、そして数か月前から入り浸っているあそこ。どこに行っても心が休まるところなんてない。嫌でも考え事をしてしまう。
「今は色々と忙しくて、脳がぐるぐるしていて大変なんです。何も考えたくないし、ここだと一人になれるから。私にとって都合良いところなんです」
言い終わって未来は目を閉じた。寝不足が続いて疲労も重なっている。
ほんのちょびっとしか自分の休みはない。
貴重な居眠りの時間を未来はここで培っている。こうして未来は自分のペースを守るために桐生を放置した。
寝てから軽く2時間は経ったのだろうか。ざわめきが聞こえてきた。
昼休みが始まったのだろう。未来は起きて背伸びをする。
再び開いた世界の色は本来の色に戻っていた。どうやら私の色の認識機能が戻ったようだ。
世界はこんなに綺麗だったのかと余韻に浸りながら背伸びをする。
「さて、昼飯を食べるか」
「おはよう」
「へっ!?」
未来はぎょっとする。桐生がまだ隣にいたのだ。にこにことしながら自分の目覚めを待っていたようだった。
この人は本当に仕事をしに来たのだろうか、わざわざ中学生のさぼりに付き合うなんて。
「昼ご飯はどうしているの? 弁当作っているの?」
「弁当ですよ、桐生さんは」
「うーん、どうしようかな。俺、何にも作ってないしな。いつも研究所の食堂とかコンビニで済ませているからな」
「それではさようなら。私は弁当を取りに教室に戻りますので」
未来はすたすたと屋上を去った。
本当、何を考えているのだろうかあの男は。渡り廊下を歩いて教室に戻る。
ロッカーにしまっている弁当を取り出して屋上にまた行こうか、それともあの暇人がいるからやめようか。悩んでいる未来に声がかけられた。
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