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「未来」
「涼、どうしたの」
同じクラスで幼馴染の相良 涼が眠たそうに未来を見ている。少し青白く不健康な顔色の彼は一応不良という立ち位置にいる。
喧嘩はできないが、死にそうな生気を感じさせないその容貌と家庭環境が複雑なことから周りを困惑させていた。そのため彼は微妙に不良と見られている。
周囲の人間は彼を怖がっているが、ちゃんと生きているのかどうかと気にかけている。おずおずと話しかけながらも弁当のおすそ分けをしており、そうやってみんなのおかげで涼はなんとか生きていた。
一応涼の母親は必要最低限の家事はやっているし、弁当も作っているけれどとある事情で信頼されてないからなと未来はそう思った。
「なんとなく一緒に食べたいなと思って」
「ああ、いいけど。後ろのお友達も一緒に?」
涼の後ろには必ず誰かがいる。いつも一緒にいることが多い茶髪の男子がすっと離れた。
「あー、俺はいいから。いってらっしゃい」
「ごめんね、いつもありがとう」
「あ、そうだ。今日のおかずはから揚げな」
とさっそくお裾分けを受けていた。
教室を離れて未来はさっきの男子に申し訳ないなと思った。
別についてきてもいいのだが、彼とは涼ほど仲がいいというわけではない。
まあ、ちょこちょこ話をする程度で、悪いわけでもない。
ただ、貴重な時間を奪ってしまったような気がして未来は少し悪いなという気持ちになった。
屋上に行くとさすがに男はどっかに行ったようだ。
未来と涼以外に人はいない。本当は屋上は立ち入り禁止なのだが、それでも使う人はいるらしい。教師からは暗黙の了解を得ている。
立ち入り禁止の校則はとっくに破られているから、今更注意する気にもならないとか。
「本当、珍しいね。私と一緒にいたいなんて」
「うーん、なんとなく視線を感じちゃって、怖くなったから」
「視線?」
涼はいつも家庭によるストレスを抱えており、それが髪に出ている。
若干髪の所々が白くなっており、未来を含め周りの人は可哀想にと涼を心配している。普段はあまり不満を口にしないけど、今日は珍しく言い出すとは新たに嫌なことがあったのだろうかと未来は話を聞いた。
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