1/7
前へ
/31ページ
次へ

好きな人がいる。 初めて出会ったとき、それまで感じたことの無い感情が湧いた。 それは痛みのような。 例えて言うなら 細い針が指先にほんの少し刺さった程度の小さな痛み。 でもそれ以来 ずっと刺さったままで 日が経つにつれじわじわと深く食い込む。 「行くだろ?今日。」 昼休み、食堂で私を見つけるなり笑顔で歩み寄ってきたコウタ。 「どうしようかな。お金ないんだよね。」 いつものメンバーでのいつもの飲み会への誘い。 地方から出てきた私は、親からのギリギリの仕送りで学校に通い、 それ以外にかかるお金は週4日のアルバイトで捻出している。 それすらもあっという間に底をつくほど、都会での暮らしにはいろいろと出費がかさむ。 「行こうぜ。バイト休みなんだろ?俺が立て替えてやる。無期限無利子にしといてやるし。」 「それ、事実上の(おご)りじゃん。そんなんで行っても楽しくないよ。」 「まあ、そう言うなよ。」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加