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「ああいうのを天然、って言うんだろな。俺、カズの言ってること30パーセントぐらいしか理解できねえ。」
「私は50パーくらいかな。」
帰り道、二人きりで並んで歩く。
コウタは酔っているのかフラフラと蛇行しながら進む。
「半分理解できてるんならすげーな。アイツと付き合ってるっていう男ってやっぱり天然なんだろか?」
「いや、会ったことあるけど意外と普通だったよ。7つも年上だし、可愛いみたい。あの感じが。」
「可愛い…ねえ。俺は無理だな。面白いとは思うけど。話が噛み合わないって難しいよな。」
こんな話し、するつもりなどなかったのに、無理なく言えそうな話の流れになっていた。
二人きりでいるこの状況と酔いに任せて口にしてみる。
「じゃあ…コウタはどんな子がいいわけ?」
一瞬の沈黙。
「まあ…別にタイプがあるわけじゃないけど。好きになりゃそれがいいわけで。」
コウタは急に酔いが覚めたかのような真面目な口調でそう返し、並んでいた私の少し前を歩き始めた。
敏感なコウタに勘付かれてしまったのか。
これと言って具体的なことを口にしたわけでもないのに、
私の気持ちを察したかのようなぎこちない態度。
「ミキは?どんな男がタイプ?付き合ってるヤツ、いないって言ってたよな。」
話題を変えられなくてそう言ったのか。
それとも探ろうとしているのか。
私の気持ちを。
もしかして、何か言わせようとしているんだろうか。
私はまるで賭けに出るかのように言葉にしてみる。
「……そうだなあ…コウタみたいなの、結構タイプかもね。」
反応を見る。
いざとなれば笑い飛ばして冗談、てことに出来る気がした。
「俺?」
ちらりと斜め後ろの私を振り返り、またすぐに前を向く。
「……やめといたほうがいいぜ。俺、結構フラフラしてるし。ミキには真面目な男のほうが合うんじゃないか?」
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