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目の前が暗くなる。
身体じゅうの力が抜けボンヤリと頭の中が霞む。
笑い飛ばすはずだったのに、
声さえ出ない。
「コウタに…私に合う男なんて決められたくないけど。まあ、真面目な男のほうが好きなのは確か。」
やっとの思いで搾り出した自分の声があまりに低くて悲しくなった。
落胆を隠しきれていない。
「なんだよ。冗談か。」
コウタは大袈裟に顔を歪め私を振り返る。
冗談、ってことにして終わらせたいのはきっとコウタのほうだ。
「本気にしたの?自惚れすぎ。」
「だって俺、モテるから。自惚れてる。」
そう言っていつもの笑顔で笑う。
かわされた。
きっと私の想いを感じてそうした。
私は違うんだ。
コウタには、私じゃないんだ。
指先に刺さった針が、深く食い込み始める。
心臓に向かってじわじわと進んでいく。
長い苦しみの始まりだった。
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