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仕事帰りに同期の仲間に誘われて夜の街に出た。 仲間とはいえ、仕事の上では皆ライバルだ。 誰よりも早く上に認められ、仕事を任されたいと競っている。 集まって話しをするのもどこか腹の探り合い、といった感じだ。 気分は良くないがこれも自分を守るために必要だと感じている。 「沖田ってやっぱ頭少し弱いよな。昨日、メリーのロケ現場でボスに笑いながら文句言ってたよ。 ボス、顔引き攣ってた。」 「さすがカズだね。怖いもの知らずってああいうのをいうんだよね。」 「あれ、本人は文句言ってるつもり全然無いからね。普通に会話してると思ってるから。」 同期の仲間たちのバカにしたような笑い。 本当は誰にもできないことをやってのけるカズをうらやましく思っているはずなのに。 そしてこの席にカズはいない。 わざと声を掛けず集まり、カズをネタにグズグズ言うことで憂さを晴らそうとしている。 「でも、結果出してるからね、ちゃんと。人とはやり方が違うだけで。私は羨ましい。」 この場にいる私は本来ならこの仲間達と同じ穴の(むじな)。カズを(ねた)む気持ちが無いといえば嘘だ。 でもこうしてカズのいない所で交わされる、カズをツマミにした会話には嫌悪感が沸く。 私の言葉に皆一斉に押し黙った。 「でもあんなふうには出来ないから、私は私なりに頑張るしかないんだよなあ…」 場の空気を察せる私は、そう言って苦笑しながら皆の顔を見る。 「まあね。あれはマネできないでしょう。だってあれ素なんだもんね。ある意味特殊能力だよね。」 「マネしたってああはできないな。根本が違うから。」 皆どこかでは認めている。 真に憎めない。カズはそんな子だ。
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