103人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
今日はいつもよりお客様が少ないから、ということで再度本番を観させてもらせることになった。
同じものを2回観ても…とも思ったが、意外にも新たな発見があったり、伏線に気づけたりとまた違う楽しさがあった。
そして、雄陽の魅力を改めて認識できた。前半は、自由奔放ながら姉に頼り気味な洋。後半は、姉への疑惑を信じることができず悩む洋。そして終盤、涙を堪え姉から自立して生きることを決意する洋。確かにその舞台上には、宇気井洋が生きていた。
だけど、作品が終わってカーテンコールになると、浅川雄陽に戻る。最後のお礼の挨拶で深くお辞儀をし、出演者が退場していく。最後に雄陽と原度さんだけが残って、ダメ押しのお辞儀。
雄陽がお辞儀から頭を上げた瞬間、俺は雄陽と目が合った。気のせいかもしれない。だけど、その達成感に満ちた瞳で見据えられ、俺の中で何かが湧き上がった。
たぶん、アイドルや舞台俳優のファンって、こういうことなんだろうなとも感じた。
だけど、あんな人が、俺の名前を呼んで、俺の匂いを良い匂いと感じてくれて、俺の事を信じるから信じてとか言ってくれる。
ヤバい。抑制剤を飲んでいるにも関わらず、今までにない湧き上がるような感覚に、俺は死にそうになっていた。
でも一方で、俺のこの感覚は、雄陽が本番期間中でフェロモンを放出しているから。雄陽が俺に好意を示しているのは、俺がオメガで、雄陽が惚れっぽい状態になっているから。そう考えれば、自然と落ち着いてきた。
最初のコメントを投稿しよう!