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取り合いと折り合い
彼らは他愛もない喧嘩をしていた。
いや、彼らにとっては必要な争いだったのかもしれない。
「早く返せよ!俺が先だ!勝手にとってんじゃねー!泣いてるじゃねーか!」
「奪ったもの勝ちなんだよ!ボーッとして、手放してんなよ!俺のほうに来たほうがこいつのためなんだ!」
「ぐすっ…やめてよ…私が…悪かったの。ごめんね…。」
彼らは何かを取り合っていた。それは、理想の女性を取り合う三角関係だったのであろうか。定かではない。
しかし、簡単な方法で折り合いはついた。
決してもう繰り返されることはないだろう。
明日になれば、忘れてしまうような些細な取り合い…片方は選ばれるために、また片方は己の欲求を満たすために…。
彼らはどちら側にいたのだろうか。
未だに少し気がかりなのは、彼らは一旦の休息時間に慌ただしく争いを始めることだ。
まだ、理解はできないのであろう。その時間こそ黙って仲良くしていなくてはならないことに。
明日も明後日も…その次の日も互いの笑い声が絶えない日々を願って、彼らの動向については今後も見逃してはならないだろう。
【終】
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