合奏

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 悠登(ゆうと)と会ったのは、中学二年の夏の日のことだった。  その年の夏休み、私は、家族で父の友人の別荘にやってきていた。父は、毎年その友人の別荘までピアノの調律に来ていたのだが、その年は友人の勧めで私達家族も連れてきたのだ。  その友人、柳岡氏の別荘は2階建ての立派な洋館で、1階の部屋数だけでも、私達の家より多そうだった。  私達が到着するとすぐ、柳岡氏とその夫人が出迎えてくれた。私たちは夫妻に案内されて、荷物を2階の客室に置いた。ひと息つくと、母と姉がきょろきょろと部屋を見回し、ベッドや調度品にすごーい、などと声を上げている。  父はすぐに調律の作業に入るということで、部屋を出ていった。その後柳岡夫人があらわれ、邸内を案内してくれることになったが、私は彼女たちとは一緒に行動する気にはならなかったので、父の仕事見学を口実に断った。
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