2.

4/4
前へ
/9ページ
次へ
 その後も、スマートフォンでのメッセージアプリでのやり取りは続いた。一年後に彼女が大学に進学したのは知っている。どこの大学かまでは聞いていないけど。  相手のプライベートに踏み込まないように一定の距離は置いていたように思う。それは彼女も同じ。高校生の頃と変わったような、変わっていないような会話内容。表面上は仲の良い二人。  あの日のキスについても、問い詰めるようなことは出来なかった。そうすることで、どうにか保っている二人の距離が変わってしまうように思えたから。今思うに、彼女は私の反応を待っていてくれたのかもしれない。 「は? なにそれ、仲が良いの? 悪いの?」  話を聞き終わった友人は腕を組み、渋い顔をして言った。  いらぬ誤解と混乱を招きそうだったので、キスをした部分は省いて話した。 「わかんない」  自分でも理解できなくて、私はごまかすように薄く微笑んだ。 「そんな子にプレゼント?」 「悪い?」  友人は眉間に皺を寄せ、小さくうなりながら花を見繕ってくれた。 「これでどう?」言いながら友人は真っ赤な花がいくつも玉のように集まった、ブーケサイズの花束を差し出した。卒業式の日に彼女から貰った薔薇の髪飾りと似た色だ。 「なんて花?」 「ゼラニウム」  友人から受け取り、顔を近づける。私の苦手な青臭い匂いはほとんどしなかった。 「花言葉は?」  ネガティブな意味だったら彼女は気にするだろうと、私は尋ねる。  友人はニヤリといやらしく笑い「自分で聞きなさい。嫌な意味じゃないから」と教える気はないようだ。  ……聞けるはずがないでしょう。  こんなところで嫌がらせをする人間ではないだろうと、一応信用しておくことにした。  代金を払い店を出ると、すぐに私はスマートフォンで赤いゼラニウムの花言葉を調べた。いくつか意味が出てくる。彼女と私の関係に最も近いのは「君有りて幸福」だろうか?   彼女は、私が居て幸福だったのだろうか? 私は彼女が居て幸福だったのだろうか? 分からない。  海外では「真の友情」という意味もあるらしい。彼女と私の間に真の友情はあったのだろうか?   彼女との関係を未だに掴みそこねている自分に尋ねたところで、分かるはずがなかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加