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「引っ越し祝い、瞳とやりたくてさ」
亘が室内に促す。半分くらい片づけられたところには、チェックのチェストがあり、花が飾ってあった。その横に家具や段ボール箱が積んである。
「姉ちゃんに、少し手伝ってもらってたんだ。女の人の好みって分からなくて」
「え?」
「何て言うか。瞳、ここで俺と住まないか? ていうか、これ、プロポーズ」
「……」
「本当は、あの日この部屋で瞳と再会して、俺、その決心を固めたんだ。だから、絶対にこの部屋は譲りたくなかった。僕が借りて、瞳をこの部屋に呼んでやるって、そればっかり考えていたんだ」
「……」
私の頬に涙が伝った。
「納豆もさ、俺は」
「もういいよ」
私はかすれ声で言った。
「え?」
「納豆よりも、亘の方が大事って、気づいたから。私も、この部屋で亘と再会したときに」
「じゃあ、OK?」
「うん」
亘はぎゅっと私を抱きしめた。
「納豆はさ、俺、ベランダで食べるからさ」
「は? やめるんじゃなかったの?」
私は泣き笑いした。
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