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初夏の風に当たりながら自分の部屋に入ると、ひんやりとして薄暗い。アパートの1階。家賃はお安めだが、日が当たらず冬は底冷えがする。私はふと引越ししたくなった。
パソコンで調べてみる。いろいろ魅力的な物件を眺めて愉しむ。でも、最初は本気ではなかった。あの物件を見つけるまでは。
何? この扇形の部屋は? いっぺんで惹きつけられた。広さも申し分ない。ビルの5階。東向き。家賃は今よりちょっと高いが、払えない額ではない。ああ、ここに住んでみたい! さっそく取り扱いの不動産屋に駆け付けることにした。こういうとき私の行動は早い。
チェーンの不動産屋は電車で1駅離れたところにあった。勝手知ったる場所だ。
「いらっしゃいませ」
にこやかな挨拶。私は席に着くと、さっそくネットで調べた物件を伝えた。
「まだ残ってますか?」
意気込んで聞く。担当のお姉さんは書類を取り出し、微笑んだ。
「大丈夫ですよ。さっそく見に行きましょう」
私は小躍りしたい気分になった。
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