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「さて、今日はもう僕も予定があるんだよね」
電話が終わると、亘は明るく言った。
「そ、そうなの。じゃあ、この話は」
「気の済むまで話し合うのは続けようよ。でも、僕は譲る気はないからね」
「……」
何だか私は菜っ葉に塩状態になっている。おかしいな。何をそんなに萎れているのか。憎まれ口をたたく気力もない。亘も少しそれに気がついたのか、肩透かしを食らったように私の顔を覗き込んだ。
「いいよね、瞳? また連絡するよ。電話、変わってないだろ?」
私は黙ってうなずいた。
そこで別れて、私はとぼとぼとさっきの不動産屋に向かった。
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