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「亘、悪いけど、私が先よ」
私は噛みついた。
「何を言ってるんだ、瞳、こっちが先だ。俺たちは一回内覧して、周りを見てきたところなんだ」
「何ですって?」
不動産屋さん同士の間にも静かな火花が散っているのが分かった。でも、さすがにお客の前での営業スマイルは忘れない。
「あら、お知り合いだったんですか」
「こんな偶然もあるんですね」
と私たちをとりなす。けれど、悪いけど、亘の顔を見た途端、私の中で何かが弾けた。
「絶対に渡さない。この部屋は私のものよ」
「何だよ、こっちが先だったんだぜ」
「この浮気男が、女と住もうって魂胆じゃないの」
「魂胆なんて言われる筋合いじゃないね、俺が誰と住もうが俺の勝手だろう」
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