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 見知らぬ声は子供達がざわめくのを予期していたかのように、場が静まるのに十分な時間を空けてから続けた。 (特別な人間達よ。今日この場所で君達に会えたことを、私達は本当に嬉しく思っている。後で一人一人、ゆっくり話を聞かせてもらうとするが、今は有難うと感謝の気持ちを伝えさせてくれ)  不安に耐え切れなくなった咲希は翔太の袖を掴み、 (翔太、何か変だよ。何でこんなに静かなの? 誰もいないの?) (変?) (そうだよ。日曜日なのに、私達以外だれもいない。空を見て、いつもなら携帯電話の赤い光が飛んでいるのに、今日は全く飛んでない。それにほら、あそこの車、パトカーだよね。一台、二台……五台も。私達囲まれてる) (きっと、警察と協力して悪い奴らと戦うんじゃないかな)  翔太はまるで咲希の言葉をあしらうかのように、上の空で相槌を打った。僕達は特別な人間なんだから。その言葉が何にも代えられない無敵の言葉として翔太や外の子供達の心を支配していた。  翔太の耳に集音した久しぶりの現実の音は空からの来訪者であった。ヘリコプターが二台、一台は迷彩柄の大きなヘリコプター、もう一台は民間の、時折ニュースなどで夜景を撮影しているような白くて小さなものが、バタバタと空気を振動させていた。  翔太は迷彩柄のヘリコプターを目にして、いよいよ衝動が確信に変わったような気がした、僕達は悪者と戦うんだ。迷彩柄のヘリコプターから発せられている赤い光は何かを隠すように薄い靄のかかったものであったが、翔太はその言葉を漏らすまいと、精神統一をするかの如く深呼吸をしてから目を瞑った。 (……ノウ……ガイ……ホソク……)  途切れ途切れの言葉は秘密めいた暗号のようで、翔太は目を瞑り、感覚をさらに研ぎ澄まして言葉を追った。 (デンノウショウガイヲモツコドモタチヲホソクシマシタ。ヨウドウサクセンセイコウ。サクセンコード『ゼロ』、ジュンビカンリョウ)
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