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 翔太がこうなってしまったのはいつからだろうかと、母親はアルバムを開き見つつ、昔を思い返してみることにした。  はっとした。予兆は、写真にしかと刻まれていたのだ。  白いタオルに包まれた産まれたばかりの翔太は、泣いていた。その一枚だけを見れば、赤ん坊なのだから泣くのは仕方のないことだ、カメラのフラッシュが眩しかったのでは、と誰しもが思うのであろうが、それを起点に、今までの成長過程において収められていった写真の翔太は、泣いているか、どこかむず痒いといった表情をしていたのだ。笑っている写真といえば、保育園のお遊戯会や運動会や遠足の写真であり、そのどれもはカメラとの距離が遠く離れているのである。  つい最近撮られた、五歳の七五三の写真館で撮られた写真においても、多くの泣き叫ぶ子供達を一瞬の内に笑顔にさせてきたベテランのカメラマンをも困らせたほどで、たっぷり一時間をかけてようやく収められた写真でさえ、やはり強張った表情なのである。  翔太は外の子と比べれば静かな子供であったことを母親はずっと感じていたのだが、それには奇妙な理由があったのだとこの時知らされることになった。写真館で写真を撮り終えた翔太は、外で携帯電話で仕事の話をしていた父親を見て言った。 「ねえお母さん。僕、おかしいのかな? お父さんの携帯電話から空に向かって伸びる赤い光が見えるんだ。ほら、お空にいっぱい、そこにも、あそこにも、赤い光の線が見える。何を話しているのかもわかるよ。テレビからは白い光が出ているし、パソコンからは灰色の光が出てる。カメラは緑で、冷蔵庫や電子レンジは黄色い光が出ているし、外にもいっぱいあるんだ。その光を浴びてると、頭が痛くなったり、気持ち悪くなったりしちゃうんだ。でもね、健二君はそんなの見えないって言うんだ。僕がおかしいって言うんだ。僕がおかしいのかな? お母さんにも、見えるよね?」
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