side~太陽~

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side~太陽~

「……あらら、もう寝ちゃったのね」  律子さんがそう言って抱きかかえ直す。腕の中で眠る弟の顔は随分白くて生気が感じられない。  緊張してたのか、力の入っていた手がだらんと垂れ下がる。小さく寝息を立て始めた瑞月は、起きているときも柔い印象を与える子だったけど、寝てからはもっと小さくて心配になるほど弱く見えた。 「――太陽くんもお昼寝する?」  律子さんはそう言って、こちらを振り返った。その顔には弟に見せていた優しい顔と同じ。少しだけ安心して、そういえば自分もちょっと眠いな、と思い「うん、少しだけ」と返した。 「じゃ、一緒に部屋に行こうね」  綺麗に整頓された廊下の先にある二人の部屋に入る。部屋は一応仕切りがされて、奥が俺のスペース。手前が弟のスペースだった。 でもベッドはダブルベッドで、二人で並んで眠っていた。分けるべきだったかもしれないけど、俺はあえてこれを提案した。  律子さんが瑞月をベッドにゆっくりと下ろす。その前に掛け布団を持ち上げておいたから、スムーズに終えられた。母が「ありがとう」と笑いかける。  俺は、その笑顔にちょっとだけ俯いた。ありがとう、と言われた声が、言葉が怖いなんて感じたから。この人は違うのに、目の前をちらつく顔が……。 「……じゃあ、寝るね」  結局律子さんにはそれだけ言って、瑞月の隣に潜り込んだ。俺の戸惑いに気付いてか否か、律子さんは少し困ったように微笑んでから「うん、お休み」と言いつつ部屋から出て行った。  遠ざかる足音を聞きつつ、身体を起こすと、隣で深い眠りについているらしい瑞月の顔を見る。 「――おかあさん、って言ってたよな」  さっきの事を思い出して呟く。瑞月が律子さんを母だと認識し始めているんだろう。口数が少ない分、ほんの少しの変化が分かりやすい。  そう思ったら少しだけ羨ましくなった。双子とはいえ、瑞月と俺とじゃ生きてきた人生が違ったから。
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