奪女

2.

「来月から産休に入る山中さんのかわりに来てくれた、派遣社員の島脇さんです。
島脇さん、一言だけいいかな」

部長の後方に立っていたまだ学生さんのような若くて可愛い女性が、名前を呼ばれて一歩前に進み挨拶をする。

「島脇 星姫(せいら)です。
1日でも早く仕事を覚えて、山中さんが安心して産休に入れるよう頑張ります。宜しくお願いします」

我が社は、学校や会社の修学旅行、慰安旅行や勉強合宿、部活の大会ツアー等を柱に、団体向けに国内ツアー、バスツアーを取扱う旅行会社だ。

山中さんは事務のベテランさんで、40歳での初産。今回大事をとって早めに産休に入る。

営業所の中では大所帯の10人、男7人、女3人。山中さん以外は営業職で、企画、営業、依頼があれば同行全てをこなす。
成果主義とは名ばかりで、年功序列制度が色濃く残り、良く言えばアットホームな職場だ。