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青木と知り合う機会がないかと友里は考えていた。それは、わりとすぐに訪れた。
「どうしたの富樫くん、ずいぶん元気ないね」
自販機でたまたま会った富樫は、明らかに落ち込んでいた。
このときには、友里の助言もあって二人はつき合い始めていた。日に日に可愛らしく変化する梅乃を見ることは、友里にとっても嬉しく幸せだった。
「林チーフ、聞いてくださいよ。課長、今日デートなんですよ。俺というものがあるのに、あいつと」
「デートって、梅乃が? 誰と?」
「日欧貿易の青木さんです」
「青木? もしかして、梅乃の同級生の?」
富樫が驚いたように目を見開いた。
「ご存知でした? そうですよ、その青木さんですよ。あの人、日欧貿易に務めてたみたいで、さっきまで打ち合わせしてたんですよ。二人で飲みに行く約束してたみたいで。課長も課長っすよ、二人で飲みに行くことが悪いと思ってないんだから」
ブツブツと富樫が文句を言っている。それを聞き流しながら、友里はチャンスが来たと思った。
退勤後、渋る富樫を連れて梅乃の行きそうな店に目星をつけた。この間、焼き鳥が食べたいと梅乃が言っていた。梅乃と友里が行く焼き鳥屋は一つしかない。
電話をかけると、焼き鳥屋に来てるという。
当たりだ。
友里は、青木と梅乃を見たら笑えないと、ふてくされる富樫の腕を引いて店に入って行った。
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