焼き鳥屋にて

4/18

2320人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
 青木と知り合う機会がないかと友里は考えていた。それは、わりとすぐに訪れた。 「どうしたの富樫くん、ずいぶん元気ないね」  自販機でたまたま会った富樫は、明らかに落ち込んでいた。  このときには、友里の助言もあって二人はつき合い始めていた。日に日に可愛らしく変化する梅乃を見ることは、友里にとっても嬉しく幸せだった。 「林チーフ、聞いてくださいよ。課長、今日デートなんですよ。俺というものがあるのに、あいつと」 「デートって、梅乃が? 誰と?」 「日欧貿易の青木さんです」 「青木? もしかして、梅乃の同級生の?」  富樫が驚いたように目を見開いた。 「ご存知でした? そうですよ、その青木さんですよ。あの人、日欧貿易に務めてたみたいで、さっきまで打ち合わせしてたんですよ。二人で飲みに行く約束してたみたいで。課長も課長っすよ、二人で飲みに行くことが悪いと思ってないんだから」  ブツブツと富樫が文句を言っている。それを聞き流しながら、友里はチャンスが来たと思った。  退勤後、渋る富樫を連れて梅乃の行きそうな店に目星をつけた。この間、焼き鳥が食べたいと梅乃が言っていた。梅乃と友里が行く焼き鳥屋は一つしかない。  電話をかけると、焼き鳥屋に来てるという。  当たりだ。  友里は、青木と梅乃を見たら笑えないと、ふてくされる富樫の腕を引いて店に入って行った。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2320人が本棚に入れています
本棚に追加