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「青木くんてあれね、好きな子には意地悪するタイプなんだね」
咳き込む青木を見て、友里は楽しそうに声を上げた。
「でも、あれはだめよ。年下の彼氏に向かって少年なんて。だって、梅乃が傷つくかもしれないでしょう? あなたの言動が原因で、梅乃が暴力振るわれたらどうするの?」
青木の顔色が変わった。目をつり上げて友里を見つめる。
「あいつ、うめに暴力振るうのか?」
「振るうわけないじゃない。あんなに優しくて真っ直ぐな子、なかなかいないわよ」
安堵のため息をつく青木に、友里は詰め寄った。
「だから。わざわざかき回すようなことをするのはやめてあげて」
友里は釘を刺したつもりだった。
梅乃は富樫が大好きだし、富樫は上手に梅乃を支えている。幸せそうな梅乃の顔を曇らせてほしくなかった。
「ふーん、友達思いなんだ、友里ちゃん」
林さんが友里ちゃんに変わった。
「だったらさ、もっと努力してもらわないと、やめらんねぇよな」
「どういう意味?」
「俺がさ、うめじゃない誰かを好きになればいいわけだよね? 友里ちゃん彼氏は?」
彼氏はいない。正確にいえば、消えてしまった。飛行機事故に遭い、死んでしまったことになっている。海の藻屑と化したのか、助かってどこかにいるのか、よく分からない。
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