焼き鳥屋にて

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 初対面の人間と酒を飲むと、場を繋ぐためについ飲み過ぎる。よくある話だが、友里も例外ではなかった。  もっとグイグイくる感じだと思っていた青木はわりと物静かで、二人の間に沈黙が訪れることもしばしばあった。つまらないと思わせたらいけない、変な責任感から友里は、何度もおちょこに手を伸ばした。  きっと青木は、梅乃の前ではもっとしゃべるし、梅乃の話を聞こうとするのだろう。でも、友里といる青木は、友里にあまり質問をしないし自分のことも話さなかった。  興味があるか無いかの違いだろう。  それは、友里を不可解な気持ちにさせた。説明がつくことばが思い当たらない、なんともいえない気持ちだ。 「友里ちゃん、大丈夫?」  なんともいえない気持ちのせいか、酔いが回る。吐く息が熱いし、視界がぐるぐる回る。足に力も入らない。 「大丈夫、大丈夫だから。明日仕事でしょう? 青木くん帰っていいよ」  友里はビルの階段に座り込むと俯いた。  吐きそうな感じはない。ただ苦しくて、できるならここで眠りたいぐらいに、身体に力が入らない。 「俺帰ったらどうすんの?」 「少し休んでれば酔いも醒めるから、そしたらタクシーで帰るわ。大丈夫だよ、本当」
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