この手を、取り合って。

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「うん、正解だ。すごいね、これ昨日間違えた問題なのに、もうできるようになったんだ!」 「へへっ。まぁね」  岸 楓(きし かえで)は、大学2年生。  アルバイトで、家庭教師をやっている。  今教えている男子は、高校2年生。  受験生ではないので比較的気は楽なのだが、楓にはひとつだけ悩みがあった。 「先生、勉強すんだら、親父が話をしたいって言ってたよ」 「そ、そう」  この教え子・ 本城 大翔(ほんじょう ひろと)が、少々わけありの少年なのだ。  テキストを閉じ、楓は大翔とともに勉強部屋の外に出た。 「大翔さん、先生、お疲れ様です」 「うん。難波(なんば)も来てよ。今から親父のトコに行くから」 「はい」  楓は、廊下でひたすら大翔の気配を守っていた、この男に会釈した。  彼は、難波 征生(なんば いくお)。  大翔のボディガードとして仕える、20代後半の男性だ。  細身だが、がっしりした体躯。  ひどく鋭い、目つき。   だが、時折見せる甘く優しいマスクは、人の心を和ませる。  そんな印象を、楓は征生に持っていた。
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