第二章 偏見。そして、事件。

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 やっちゃった。  途端に、他の男が騒ぎ出した。 「おい、しっかりしろ!」 「ンだぁ! てめぇはァ!?」 (に、逃げなきゃ)  でも、足が竦んで動けない。  その隙に、女性が立ち上がって素早く逃げ出した。 (ぼ、僕も逃げなきゃ!)  男たちが、立ち上がる。  その時、楓は腕を掴まれて明るい方へと引っ張られた。 「先生!」 「な……ぅぐぐ」  難波さん、と言いたかったが、その彼から口を塞がれた。 「走ってください、何も言わずに!」  手を引かれ、言われるままに駆けだした。  手を取り合って、逃げ出した。 「待てェ!」 「追えッ!」  背後から、男たちの足音が聞こえる。 「はぁ、はぁ、もうダメ……」 「隠れます。息を殺して」  楓は、征生に手を引かれたまま、家電量販店の駐車場へ紛れ込んだ。
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