第二章 偏見。そして、事件。

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 念のため、その場に10分程度とどまった後、二人は車へ戻った。  征生が運転をしている間中、楓は小さくなっていた。 (怒ってるかな。僕が、あんな無茶やったから)  はぁ、と小さく息を吐いた。 (ヤクザの先生、って差別されてるけど、僕自身が虎の威を借る狐になっちゃってるのかもしれない)  バックにヤクザがいると判れば、誰も楓に強く出ることはない。  現に、しつこく交際を迫っていた先輩が、ぱったりと誘わなくなっていた。 (どこかに、難波さんが近くに居るから大丈夫、って甘えがあったんだ。きっと)  でも……。 (どうして難波さんは、自分の身分を明かさなかったんだろう)  本城組の組員と解れば、あんな若いチンピラなら恐れ入って逃げ出しただろうに。 「先生、着きました」 「あ。ご、ごめんなさい!」  物思いに耽っていた楓は、ようやく現実に引き戻された。
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