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「先生は、私のことを臆病者と思ってらっしゃいませんか?」
「いえ、そんなこと」
楓は、征生に部屋へ上がってもらっていた。
二人、ミネラルウォーターで喉を潤しながら、ソファに掛けて話した。
「あの4人の顔には、見覚えがありました。隣県の、大倉組の若い衆です」
「え!?」
ヤクザ相手に、僕はあんなことを!
再び、身をすくめる楓だ。
征生は、ただ淡々と語った。
「ヤクザは、面子を潰されることを嫌います。それが、堅気の先生に殴られた。ですから、ああも執拗に追って来たんですよ」
「……」
「私の名を出せば、今度は組同士の諍いになりかねません。そこで、逃げるしかなかったのです」
車で逃げれば、ナンバーを覚えられる危険もあった。
勘弁してください、と頭を下げる征生に、楓は慌てて手を振った。
「僕の方こそすみません! 後先考えずに、あんなこと」
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