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(これは、いけないことなんだ)
そう自分を叱りつつも、楓とのキスは心地よかった。
彼の舌がそろりと咥内に忍んできた時、征生の理性は溶けて消えた。
「先生……ッ」
貪るように、その舌を舐めた。絡めて擦り扱き、甘い唾液をすすった。
「ん、っあ。ふ、ぅん、んッ」
密やかな楓の息遣いが、嫌でも征生の性欲を刺激する。
いつも、見ていた。
眼で、追っていた。
そして、身につまされながら聞いていた。
『先生、はぁ、はぁ、気持ち、い? なぁ、俺、巧い?』
「ん、ぅんんッ! いいよ、すっごく気持ち悦いよ。大翔くんっ」
粘っこいローションの水音、肌を叩く乾いた音、そして、あられもない楓の悦がり声。
(平常心で聞いていたはずだった。だが……っ)
いつしか、それらが自分を蝕んだ。
先生、いや、岸さん。
いいや、楓さん。
私は、あなたのことが。
あなたのことを。
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