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姿が映るほど磨かれた長い廊下を歩き、楓は座敷に通された。
まず、大翔が。
次いで楓が入室し、最後に征生が襖を静かに閉めた。
「先生。さ、どうぞ召し上がってください!」
グラスを差し出し、ビール片手に大翔の父親は嬉しそうだ。
螺鈿の装飾が入った美しい座卓には、豪華な船盛を始め美味しそうな山海の珍味がずらりと並んでいる。
「親父、俺もビール!」
「バカ! お前はまだ未成年だろうが!」
息子を叱りながらも、楓にグラスを押し付けるように持たせ、なみなみと酒を注ぐ大翔の父。
「いや~、この不肖のせがれも先生のおかげで、グングン成績が伸びとります」
「いえ、大翔くんの実力ですよ」
美味いはずのビールも、味がしないほど楓は緊張していた。
目の前にいる男は、にこにこしているが極道。
本城組の、組長なのである。
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