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「この度の大翔の成績は、ひとえに先生のおかげです。改めて、御礼をいいます」
「いえ、その言葉は合格発表の時まで、とっておいてください」
「これからの話は、先生だけに打ち明けることです」
「はい」
不安を覚えながら、楓は組長の話に耳を傾けた。
「県南の岬付近に、本城建設がリゾートホテルを建築中ということは、ご存じですな?」
「はい。あの景勝地に」
実は、と父親は煙草に火をつけた。
「大翔に、あそこを任せようと思っております。堅気として、綺麗な仕事をさせたいと」
「え?」
「大翔には、跡は継がせません。本城組は、私の代で終いにします」
楓は、眉をひそめた。
こんな話、僕みたいな人間にしてもいいのかな。
ただの大学生の、アルバイトの僕なんかに。
「大学を卒業したら、ホテルをオープンさせます」
「待ってください。卒業したての大翔くんにホテル経営を任せるのは、あまりに酷ではありませんか?」
「難波を、右腕に付けようと思っております」
楓は、息を呑んだ。
征生さんを、大翔くんの側近に!?
「そこで、先生にお願いがあります」
組長の煙草の灰が、静かに落ちた。
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