第八章 俺はお前のもの

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「やぁやぁ、先生。お呼びたてして申し訳ない」  まだアルコールが抜けきっていないのか、組長は陽気だった。  大事な話を忘れていた、と彼は言う。 「先生のおかげで、大翔は合格できました。そこで、先生の欲しいもの何でも差し上げます。どうぞ、遠慮なさらずにおっしゃってください!」 「いえ、僕はこれ以上は、もう何も」 「そうおっしゃらずに!」  征生は、楓に耳打ちした。 (楓、組長の面子を潰してくれるな)  は、と楓は思い出した。  以前、征生が語った言葉を。 『ヤクザは、面子を潰されることを嫌います』  そうか。  それだけ組長さんは、僕に恩義を感じてくれてるんだ。  だったら……。 「では、欲しいものをひとつだけ」 「何でもどうぞ!」 「……難波さんを、征生さんを、僕にください!」  絶句したのは組長より征生の方だった。 (楓! 何てことを!)  楓はこぶしを握り締め、祈るような眼で組長を見ていた。
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