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「大翔くんの家庭教師のことですが……」
「その件ですが、先生」
すっ、と組長は居住まいを正した。
「あと1年、せがれをよろしく頼みます」
「え……」
先生のおっしゃりたいことは解ります、と組長は座卓に両手をついた。
「しかし、これほどこいつが。大翔が熱を入れて勉強し始めたのは、先生がいらしてからなんです」
「ですが……」
お願いします! と、背後で大声がした。
征生だ。
このままでは、座卓に土下座しかねない組長の代わりに、征生が畳に額を擦り付けていた。
「大学受験。大切な人生の岐路。大翔さんのそれをお任せできるのは、先生だけなんです!」
あぁ。
まただ。
僕は、この人の言葉には、本当に弱い。
「……解りました。できる限り、協力させてもらいます」
「ありがとうございます!」
征生と組長の声が重なって、響いた。
話の中心にいるはずの大翔は、こっそりビールを飲んでいた。
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