第八章 俺はお前のもの

8/9
前へ
/64ページ
次へ
 恥だな、と征生は楓に微笑んだ。 「10歳も年下の男に、嫉妬だなんて」 「ううん。すごく嬉しい」 「だが、組長の言うように、俺はもうお前のものになったんだ。好きにしていいぞ」 「何でも言うこと、聞いてくれますか?」  ああ、と征生はうなずいた。  この笑顔が見られるのなら、俺は何だってできる。 「じゃあ……、ここに。僕のマンションに住んでください」 「何?」 「僕、もう征生さんと離れたくない。いつも一緒にいたいんです」 「……」  あれ?  もしかして、征生さん束縛されるのは嫌いなタイプ?  僕、征生さんを怒らせちゃったのかな……。 「あのっ! ダメならいいんです! ちょっと、考えてみただけで……」  楓の口に、ふわりと征生の唇が重ねられた。 「ぅん……、ふっ」  それは、と征生は柔らかく微笑んだ。 「こちらから、土下座してお願いしたいくらいだ」 「征生さん……! あんッ!」 「おいおい、動くな。まだ挿れたままなんだぞ」 「征生さん、今夜は泊って行ってくれますか?」 「ここが、俺の家なんだろう?」  ぎゅっ、と二人は抱き合った。  朝帰りでも、昼帰りでもない。  ここが、征生さんの家なんだ!  征生が楓に贈ったロレックスの腕時計が、日付を変えた。  二人の新しい未来への時を、刻み始めた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

358人が本棚に入れています
本棚に追加