ベリィーボーイ

　もちろん竹ザルのままでは、船底から海水が溢れ出し沈没は免れないため、船体の外側には隙間を埋めるコールタールが一面に塗られている。その構造を知るに至ったのは、ベトナム中部のダナンという町で実物を目にしたことによるが、その時は港の岸壁の上に甲羅干しにされているモノを見ただけで、実際に人が乗って海に浮かんでいる絵を目撃したわけではなかった。それをカメラのフィルムに焼き付けることができなかったことがずっと心残りだった僕は、ハノイからフエ、ダナンを経て、ホーチミンに南下し、メコンデルタを一通り回った後、わざわざ時間をつくって、一度駆け抜けた道を再び戻るような形でこの町にやって来たのだ。だか、その本場でお椀舟をキャッチするという目的は、今のところ、アジアの灼熱の太陽に阻まれ続けていた。