ベリィーボーイ

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 とにかく、茹だるような暑さだった。海に近い橋の河口側には、両岸に隙間無く小さな漁船がひしめき合い、港町らしい体を成していのだるが、稼動している船は一隻もなかった。確かにこの暑さでは、魚を捕る方も、捕られる魚の方もモチベーションが上がるはずはなく、目に映る全てのものが蒸し暑く淀んだ空気の中で、じっと何かに耐え忍んでいるように見えた。  それでも、午前中はお椀舟を求めて、その辺りをせっせと歩き回っていたが、たいした成果もないまま時ばかりが過ぎ、僕は灼熱の太陽の餌食になり、倒れ込むように、この川沿いのベンチに落ち着くことになった。もはや、偶然の出現を待つ以外に道が思い浮かばず、昼食も屋台で買ったフランスパンのサンドイッチだけだったせいか、僕自信のモチベーションも下がっていく一方だった。
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