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その高波の置き土産をこれから、僕と爺と婆のたった三人で拾い集めなければならなかった。ほんの十日ほど前までは、アルバイトに来ていた孫たちもいて、いくらでも人手があったのだが、盆を過ぎた今となってはどうしようもない。北海道の夏休みは盆前に終わる。ここはひとつ気長に構えるしかないのだろう。
ゴミを入れるカゴを引きずりながら浜を歩いた。遠くに二匹の犬を連れて、フジモトの婆が波で打ち揚がった昆布を拾い歩いているのが見える。波が引いたとは言え、海はまだ時化の状態が続いていた。風は冷たく、赤岩にもすでに秋の気配が見え始めていた。心にぽっかりと空いた穴を埋めるがごとく、僕は無心でゴミを拾い集めた。
そして、僕はそのゴミのベルトの中で、ある生き物の骨らしきものを手に容れた。その骨はひと目で僕の心を虜にした。直径は十五センチ程度で、円盤の形をしており、表面には中心から放射状にウロコのような溝が並んでいる。確かに生き物の骨であることは間違いないようだ。しかし、それが何という生き物で、身体のどの部分の骨なのか全く見当がつかない。ただ、その均整のとれたフォルムは僕のこころの中の何かを異様に昂らせた。
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