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後日談70
それにしても不思議なものだった。崩れたというよりは消え去ったかのように壁が無くなっていたのだから。
「まるで魔法みたいね」
ミャーコはそんな事を思いながら、隠された書庫の中の本を読んでいた。
そこにあった本は、書庫の他の本と比べて明らかに毛色の違う事ばかりが書かれていた。
(ここの本なら、より詳しく調べたい事に到達できるかも)
ミャーコはわくわくしながら本を読み進めていく。
だけども、さすがに書庫を見つけた時間が遅かったので、あっという間に夕方を迎えてしまった。なので、途中であるにもかかわらず家に帰らざるを得なくなってしまった。
(持って帰って読もうかしら)
ミャーコはそう思って本を持ち出そうとするが、どういうわけか、本を持ち上げる事ができなかった。さっきまで持てていた本ですら持ち上がらないのだ。まるでその場を離れる事を拒絶しているかのようである。これにはミャーコもさすがに諦めた。
(隠された書庫の中にあったんだものね。門外不出っていう事なのかしら)
摩訶不思議な現象だったものの、ミャーコは仕方なく本を持ち出すのを諦めた。
「うん、また明日来ましょうかね」
そう言って隠し書庫を出るミャーコ。すると、隠し書庫から出た瞬間に、すうっと消え去った壁が復活していた。
「うはっ、本当に不思議な部屋ね。今まで話した感じだと、村長たちも知らない感じだったし、もしかしたら、神託の巫女とか特殊な人物しか見られない部屋って事なのかしらね」
ミャーコはそう考える。だが、これ以上考えていると遅くなってしまうので、この日はそこですべてを打ち切って家に帰っていったのだった。
さすがにこの話は両親にはしなかった。ちょっと遅くなった事を問い詰められたりはしたけど、書庫で本を読み漁っていたといったら納得してくれた。納得してくれちゃうんだ……。
夕食の席で、ミャーコはもう数日間村に滞在する事を両親に伝える。そして、翌朝村長の家に出向く事も伝えておいた。元村人とはいえども、現在は領主の片腕の貴族だ。そういった点ではちゃんと筋を通しておいた方がいいのである。ミャーコの両親もなんとかその事は理解できたようだった。
食事を終えた後のミャーコは、そのまま部屋でぐっすりと眠ったのだった。
翌日、朝食を食べたミャーコは、村長の家へと向かった。
「おはようございます、村長。ちょっとお話はよろしいでしょうか」
家の扉を叩きながら、ミャーコは中へと呼び掛ける。すると、まだ少し寝ぼけた感じの村長が家の中から出てきた。
「なんじゃ、ミャーコか。朝から何じゃ……」
左目があまり開いていない。本当に起きたばかりといった感じだった。
「お話があるんです。入っていいですか?」
「ああ、構わんよ。まったく、貴族になったとはいうが、強引なのは相変わらずじゃのう……」
ミャーコの態度を見て、村長は愚痴をこぼしていた。
「で、話とは何ぞやな」
ぬるめのお茶を飲みながら、村長はミャーコに切り出した。
「事情があって、村への滞在が延びる事になりました」
ミャーコの口ぶりに何かを感じる村長。
「……ほほぉ、書庫で何かを見つけたか」
「はい、実は隠された書庫がありました。そこにもたくさん本があったので、調べるために時間がかかりそうなのですよ」
「なんじゃと?!」
ミャーコの言葉にガタリと勢いよく立つ村長。
「どこじゃ、見せてくれ!」
ものすごい食いつきようである。隠し部屋というのはやはりロマンなのだろう。
「この後向かいますので、一緒に来られますか?」
「行く! 行くに決まっておろうが!」
ミャーコが確認を取ると、間髪入れずに答えが返ってきた。勢いが凄すぎて、ミャーコがドン引きするレベルである。
ともかく、こうしてミャーコは村長と一緒に書庫に向かう事になったのだった。はてさて、新たな発見はあるのだろうか。ミャーコは期待に胸を高鳴らせていた。
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