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後日談74
しっかりと仕事こなして、王都へ向けて出発するミャーコ。ハリケーンサイトが馬車は俺が引くとはばからず、ひと悶着はあったものの、無事に出発ができた。ちなみにハリケーンサイトはマロンに怒られて結局お留守番である。年を重ねたせいか、もはやただのわがままな馬になってきていた。
(まったく、ケーンったらボスの風格が無くなってきてるわね。もう少ししっかりしてほしいわ)
ミャーコは両腕を組んで悩みながらも、どこかで嬉しそうに笑っていた。そして、四日ほどを掛けて王都へと向かったのだった。
王都の入口に到着すると、ミャーコは意外な人物を門で見かける。
「おーい、みやこーっ!」
「げっ、なんであんたがここに居るわけよ!」
聞こえてきた声に思わず顔をしかめるミャーコ。
そこに居たのはなんとチアベルだった。王太子妃となったはずのチアベルが、門まで出迎えに来ていたのである。ちなみに護衛に居たのはボルテだった。ボルテもだいぶ大人びてきていて、がっしりとした体がさらにがっしりとしていた。
「ミャーコが来ると聞いていたので、つい出迎えに来てしまったのよ。今はちょうど巫女としての務めの合間だしね」
悪びれるつもりのないチアベルだった。よくアレックスも許可を出したものである。よく見るとボルテの他にも護衛は居るみたいだけど、仮にも王太子妃なんだから、そこは止めてほしかった。
「何を頭を抱えておるんじゃ、ミャーコ」
そんな時に不意に声を掛けられる。
「ペティアさんじゃないですか。いらしてたんですか?」
「お前さんが来ると聞いてな。本当は迎えの兵士だけにしようかと思ったんだが……」
ミャーコの質問に答えるペティアの視線が、チアベルに向いていた。それですべてを察してしまうミャーコである。チアベルが出てきたので、やむなくついてきたわけだった。
「まったく、ドッグワイズ公爵の手紙を見るなりこれだ。止めるのも聞かずに出迎える満々だった。護衛の選択も大変だったぞ」
ペティアは大きなため息を吐いていた。ご苦労様としか言いようがないミャーコである。
「それにしても、ボルテもずいぶんと立派になったわね。どうよ、城の兵士になってみて」
ミャーコはボルテに笑いながら話し掛ける。
「なんというかな、身が引き締まった気分だ。あの頃に比べれば、俺もだいぶ強くなったからな?」
「ははっ、それは頼もしい限りね」
真面目に答えるボルテに、ミャーコは笑顔が絶えなかった。
さて、王太子妃が居るので、いつまでも王都の端っこに居るわけにはなかった。
ミャーコたちは馬車に乗り込んで城を目指して移動する。
「いすず、体調はどう?」
「出産からしばらくは悪かったけれど、今は安定しているわ。特に心配は要らない状態よ」
「そっか……」
チアベルから元気な答えが返ってきて、ミャーコはものすごく安心していた。
「しかしまぁ、王太子妃になったっていうのに、巫女の務めである一日二回の祈祷はなくなってないのね……」
「まぁね。外敵から身を守る手段だから、やり続けなきゃいけないのよね。この分だと、王妃になってからも続きそうだわ」
「そんな気がするわね」
「仕方ない話ぞ。それだけチアベルの力は強力というわけだからな」
馬車に乗り込んでいたペティアが、突如二人の話に割り込んできた。
「さすがにペティアさんでも厳しい?」
「私の魔法はそういうのには向いておらん。厳しいどころかそもそも無理だ」
ミャーコの質問にスパッと答えるペティアだった。
万能に近いペティアの魔法でも、できる事とできない事があるようである。ちょっとそれは意外な話だった。それでも、ミャーコたちに比べれば万能である事に変わりはなかった。
こうしてミャーコたちを乗せた馬車は、話が盛り上がったまま城へと到着した。そして、そのまま国王たちと謁見する事となり、これから数日間のお城での滞在が始まったのであった。
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