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後日談84
数日してアインズが王都から帰ってくる。
そのアインズは、屋敷の雪の状態を見て驚いていた。
「すごいな。こんなに雪が積もっているのに、屋敷の屋根にはまったく雪がない。一体どうやったんだ?」
出迎えた執事に問い掛けるアインズ。
「はい、奥様が力を使って降ろして下さいました。破滅の力と聞くと恐ろしいのですが、奥様の手にかかると頼もしいものとなりますな」
「そうか、そんな使い方をしているのか。実にスフレらしい発想だな」
執事からの返答に、思わず笑ってしまうアインズである。
「で、その可愛い妻は今はどこに居るのかな?」
アインズが執事に問い掛ける。
「それでしたら、ミャーコ様とご一緒かと存じます。お子様方が間もなく生誕一周年を迎えられますゆえ、精一杯お祝いするんだと意気込んでいらっしゃいました」
「そうか。もうそんなに経つのだな。確かにそれはちゃんとお祝いしてやらねばならないな」
アインズは思わず笑みをこぼしてしまう。
「旦那様?」
「ああ、すまないな。では、愛する妻と子どもたちのところに向かおうか」
「畏まりました」
アインズは執事に外套などを預けると、子どもたちが居る部屋へと向かっていった。
子どもたちの部屋では、ミャーコとスフレが乳母と一緒に子どもたちと戯れいていた。
そこへ、突然部屋の扉が叩かれる。
「スフレ、ミャーコ、私だ。入っても大丈夫かな?」
「あら、アインズ様。戻られたのですね」
「ええ、構いませんよ。お入りになって下さい」
「そうか、すまないな」
スフレとミャーコが同意すると、扉が開いてアインズが入ってきた。
「お帰りなさいませ、あなた」
「お帰りなさいませ、アインズ様」
子どもたちを抱えて挨拶をするミャーコたち。
「ほう、さすがに一歳ともなると大きくなったな。ペルロもシアンも」
子どもたちの姿を見て、アインズはほっとした様子である。
さすがに二人とも既に首は座っているし、立って歩く事だってできるようになっていた。獣人の性質があるだけに、その辺の成長はとても速いようだった。
「はい。お二人とも活発でございますので、なかなか目を離せられませんよ。ただ、物事を覚えるのも速いようですので、一度お教えすれば理解されているようでございます」
アインズとスフレの子どもたちは、乳母からの評価は高いようだった。
とはいえ、これはミャーコとスフレからすれば常識的だったので反応が薄かった。
「ははっ、他の獣人たちを見れば分かるな。おそらくは持ち合わせている獣人としての勘で、そのあたりの判断がつくのだろうな。さすが私たちの子だよ」
アインズはかなり嬉しそうにしながら、ペルロとシアンの頭を撫でていた。子どもたちの方も、アインズに撫でられて目を細めている。
「それで、この子たちの誕生日はいつだったかな? 去年は出産に立ち会えなかったから、今年はちゃんと祝ってあげないといけないからな」
「それでしたら、明後日でございます」
「おお、そうか。ならばこうはしていられないな」
乳母からの返答に、アインズは妙に意気込んでいる。
「誕生日前に帰ってこれるとはね。城から急いで帰ってきたかいがあるというものだ。では、スフレ、ミャーコ。またあとで会おう」
アインズはそう言うと、子どもたちをもうひと撫でしてから部屋から出て行った。
アインズを見送ったミャーコとスフレは、お互いに笑顔で顔を見合わせている。
「明後日、楽しみだね、ミャーコちゃん」
「ええ、そうね、スフレ」
子どもたちを抱きかかえたまま、この上ない笑顔で笑うミャーコたちなのであった。
それにしても、チアベルやスフレが子どもを産んでからもう一年が経つのかと思うと、時の流れというものは早いものである。
できればこのまま平和に過ごしたいものだと思うミャーコ。だが、領地内に抱えるあの崖の事がずっと気になっているために、ちょっとしたジレンマに陥るミャーコなのであった。
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