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颯と目が合うと、大神は逡巡するように目を逸らした。が、それも一瞬のことで、瞬きするころには鋭い眼光を飛ばしながら迫ってきていた。 「結果は出たのか」 「いや、まだです」 「何寝てんだ? 別に俺が困ることじゃないけどな」 いつも以上に冷ややかだ。颯は不意に立ち上がると、大神に向かって身体を屈めた。 「何……」 「怒ってる?」 「呆れてるだけだ」 眼鏡の奥で閉じられた瞳には苛立ちが滲んでいる。 「先生、付き合わない?」 耳元で、彼にだけ聞こえるよう囁く。大神の身体がかっと熱を持つのが分かった。 「なっ――お前、まだ……」 「とりあえず成果出てからですかねー」 何事もなかったかのように大きく伸びをする。こちらに向けられた頬は微かに赤みを帯びていた。 背を向けながら颯はこっそり微笑む。 ――たまにこんな反応を見せてくれるからやめられない。
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