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颯は、大神とは正反対の位置にいるような存在だ。
人望があり人気者。理系のくせに爽やかな外見で、女性ウケももちろん良い。短く切り揃えた黒っぽい茶髪も、服装もお洒落――に見える、同じ白衣のはずなのに。
180近くある大神より少し高いだけだが、体型はまったく異なる。大神はただ細いだけだが――学生から心配されるくらい――、彼は至って健康的。
たまに大学構内で見かけるときには必ず誰かと一緒だし、あれで彼女がいないのは嘘だろう。
そんな対人関係に困ってないようなパリピが、こんな冴えない三十七歳の男に言い寄る理由がない。きっとからかっているだけ――だがそんなことすらしそうにない好青年なのだ。……とにかく、外面は。
これだけ長い間好意を向けられて、揺らがないと言えば嘘になるが――大神は大きく頭を振った。自分の気持ちを振り払うように。
やはり無理だ。ましてや颯のような男とはなおさら。
だがあの男はどれだけ扱き倒して、あしらって流しても折れる気配もない。こんな真っ直ぐに気持ちを向けられるのは初めてで、どう接すればいいのかわからなかった。
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