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数日過ぎても私の頭から同棲の話が離れない。考えてはため息をつく、毎日これの繰り返しだ。
「美織、平国主任と喧嘩でもしたの?」
私の様子を見兼ねた裕香が、仕事中に隣の席から小声で話しかけてくる。
「別に喧嘩なんてしてない……けど」
「けど?」
「ん〜ここじゃ言えない」
私は一旦止めてた指を動かし、パソコンのキーボードを操作する。
「じゃあ仕事後に聞くわ。いつものところでいい?」
「OK」
仕事を終わらせて裕香と馴染みの居酒屋に行った。まずはビールを注文し、私は勢いよく飲んでいく。
「酔い潰れる前に話はしてね」
そう言って裕香は自分のペースでビールを飲む。
「……平国主任に一緒に住まないか?って言われた」
「あら、良い話じゃない。何をそんなに悩む必要があるの?」
「そうなんだけどさ、何か素直に喜べなくて……」
手に持っていたビールをテーブルに置き、私ははぁっと大きく息を吐き出す。そして話を続ける。
「正直に言うけど、前に杉村さんと付き合ってた時にさ、一緒に住まないか?って言われて途中から同棲してたんだよね。だけど結局すぐ別れて、気がつくと私の居場所も無くなって……その時味わった不幸のどん底が何か忘れられないというか」
言いたい事が上手く伝わったか分からないけど、私は本音を裕香に話した。
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