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部屋に戻ってすぐにソファに横になる。食後の甘味として菓子を買ったが、入りそうになかった。仕方なく机の端に置いておく。
右側を下にした方が消化に良かっただろうか――などと考えながら、もぞもぞと体勢を変えながら楽な位置を探す。しばらくの間そうしていたが、どうにも落ち着かず、諦めて仰向けになった。
――なんだか、食べたらまた眠たくなってきたな。
横目で机の上に置かれた書類の山を見る。引き継ぎ作業というべきなのだろうか、結局今まで目を通すこともしていない。
立つのが億劫なので、手を伸ばして適当に一枚つまみ上げる。裏カジノの収益表だ。この一ヶ月の純利益はドル換算で数百万。これが高いのか安いのかは正直わからないが――現実的に見れば「高い」のだろうが、裏カジノとして「高い」のかは判断がつかない――、ともかく正確な利益計算は他の部下に任せるとしよう。
次の紙を見てみる。学校の起業許可願であった。場所は明星街の端、ほとんど暁闇街であった。どうやら廃墟を利用して半青空教室にするらしい。
「明星街にも物好きがいたもんだ」
噂によれば、九龍城砦にも学校があるらしいが、まさかこんな街でやるような物好きなやつもいるとは――私は適当にそれらを机に戻し、溜め息交じりに脱力した。それから、手を目に当てて、視界を遮る。灯りを消すのが面倒な時にはこの手法に限る。
微睡む心地を感じながら、少しずつ意識を手放していった。
レーヴォよ、と私は呟く。
「……私は軟派に生きているよ」
自分でも何故そう言ったのかはわからなかった。
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