偽物から本物へ

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偽物から本物へ

 昨日の一夜が明けた午後の昼下がり、『取引場』としていつも使っている借り部屋で、虎徹は桐生龍也に吠え付いた。 「龍也! てめえ俺が小夜にプレゼントするつもりなの知ってただろ! ゆるさねえ!」  2人だけの静かな空間が一気にざわつく。龍也は鋭い目つきで虎徹を睨む。 「偽ブランド品を意気揚々と渡した奴が偉そうに吠えるな」 「てめえがあげたのも同じ偽物品だろうが!」  龍也は虎徹に、1枚の薄い紙を突きつけた。 「本物のブランド品証明書⁉ 小夜にあげたネックレスは本物なのか!」 「俺は小夜に本気で惚れた、もう偽物品は渡さねえ。虎徹、小夜から手を引け。今も偽物品でたぶらかす男にはもったいねえ」  龍也がポケットから指輪ケースを取り出し開けると、シルバーリングが入っていた。 「俺は今夜、小夜に告白する」  虎徹はしばらく黙った後、口を開いた。 「俺も今夜、小夜に告白する。お前と同じ、本物のリングを持ってな」
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