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1人目、篠田 真由美
ああ、また朝が来たんだ。イヤだイヤだ。
毎朝毎朝、嫌で堪らないわ。
私、36歳、独身、両親と3人暮らし。
5年間、職が決まらなくて、やっとある小企業の事務職についたんだけど、向いてないのよね。
つまらない仕事ばっかりさせられるし。
両親がせっつくもんだから、この仕事についたけど、ホントに疲れる割に退屈。
会社に9時までに着かなきゃいけないから、8時15分のフェリーターミナル行きのバスに乗んなきゃなんないのもなんだかなあ。
私、朝弱いのよね。眠いし、坂登ったとこにバス亭があるから、ホントに疲れるっての。
ああ、やっとバス亭に着いたわ。
8時13分、と腕時計で確認した。
いつものメンバーが同じようにバスを待っている。毎日通ううちに、すっかり顔を覚えてしまった。
なんだか暗い雰囲気のおじさん会社員風はいつも黒い大きなリュックを背負ってる。
毎日病院に通っているんだと言っていたお婆さんは、いつも乗る度に空いてる席を見つけると、「あんた、そこ空いてる」
と座席指定に忙しい。うるさいんだよな。従わない人もいるけど。
部活に朝から通うらしい、大学生はいつもジャージ。妙に明るくて、いつもバスが来るまでお婆さんの話に付き合わされている。
この3人がいつものメンバー。違う人が加わることも、時にあるけど。
バスに乗って、やっと席についてほっとするとのだけれど、途中トンネルの前の道路に大きな穴があいていて、すごくガタンと揺れるんだよな。その度に毎回、それにびっくりしちゃうし嫌な気分が増幅するのよね。
ガタンと大きく揺れるのは、8時28分ころ。いつも心づもりをしなきゃならないの。
これが私の朝の日常。ずーっと同じように続いていくのかしら。嫌で堪らない。
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