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「え!?あ、す、すいません!!・・・って、え!?今どこにいるんですか!?」
『署の入り口』
「えっ!!?」
蒼佑さんが、ばっと顔を前に向けた。
その視線の先には、いつからいたのか、市谷さんが腕を組んでこちらをジロリと睨んでいた。
『いいから。通報される前に早く来い』
「は、はい!」
彼がピッと電話を切る。
その表情は完全ショック状態で、「ガーン」と顔に書いてあった。
「やばい・・・。いつからいたんだ」
「・・・ふふっ、降りるね」
「あっ!ご、ごめん・・・!なんか情けない最後になって」
「ううん。いいの」
肩を落とす彼の頬に、私は軽くキスをする。
すると水を得た魚のように、彼の顔が明るくなった。
「あ、また怒られちゃうね。じゃあ、ありがとう、送ってくれて」
「う・・・うん!千穂ちゃん、好きだ!!」
車を降りて手を振る私に、彼は名残惜しそうに愛の言葉を叫んでくれた。
「私も」と言ってドアを閉めると、私は再び手を振った。
彼の車を見送って、門に佇む市谷さんに会釈する。
すると、市谷さんは見たことのない優しい顔で、私に笑いかけてくれた。
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